この記事では、ボン・ジョヴィの名曲『It’s My Life』(イッツ・マイ・ライフ) の歌詞を英語学習を兼ねて、解説します!
英語の洋楽を聴いていて
この歌詞はどういう意味だろう?
和訳はネットで検索すれば出てくるけれど
何故そういうニュアンスになるんだろう?
そんな風に感じたことはありませんか。
この記事を読んで、そんな疑問を解決して頂ければと思います!
概要
『It’s My Life』
イッツ・マイ・ライフ
『It’s My Life』(イッツ・マイ・ライフ)はアメリカのロックバンド、ボン・ジョヴィ (Bon Jovi) の楽曲です。
2000年5月にリリースされ、ボン・ジョヴィの7枚目のアルバム『クラッシュ』に収録されています。
曲名の『It’s My Life』は「これが俺の人生さ」といった意味です。
トークボックスを使ったエフェクトや、歌詞のなかにトミーとジーナが登場し、1986年にリリースされた同じくボン・ジョヴィの代表曲である『Livin’ on a Prayer』と共通点があります。
80年代に全盛期を迎えたボン・ジョヴィを、この曲は改めて当時の若い世代に再認識させました。
80年代の後では、この『It’s My Life』がボン・ジョヴィの最も有名な曲でしょう。
幅広い世代に支持を受けた曲ですが、作詞したボーカルのジョン・ボン・ジョヴィは次のように語っています。
I thought I was writing very self-indulgently about my own life and where I was in it
Wikipedia参照
(訳:私は自分自身の人生と、そこで自分の置かれている状況を、とても身勝手に書いているつもりだった)
実際、バンドメンバーの反対を押し切って、フランク・シナトラについての一節を歌詞に盛り込んでおり、本人はそこまで幅広くファンに共感を得ることは想定していなかったようです。
それとは裏腹な結果となったのは、その “身勝手さ” (self-indulgently) が実は多く人が持っている普遍的なものだったからでしょう。
『Livin’ on a Prayer』から10数年の時を経て、そんな “身勝手さ” を持ち続けられたのもボン・ジョヴィの持ち味かもしれません。
曲のテンポは速くなく、英語初学者にもついていけると思います。
この記事がこの曲をあらためて楽しむきっかけになれば幸いです。
以下、この記事では英語の文法を交えて歌詞を解説します。
歌詞・和訳
Lyrics
[Verse1]
【歌詞】
This ain’t a song for the broken-hearted
No silent prayer for the faith-departed
I ain’t gonna be just a face in the crowd
You’re gonna hear my voice when I shout it out loud
【和訳】
これは心が傷ついた人への歌じゃない
信念を失った人への無言の祈りでもない
大勢の中のただの一人になんかなりたくないんだ
俺が大声で叫べば、俺の声が聞こえるだろう
[Chorus]
【歌詞】
It’s my life, it’s now or never
I ain’t gonna live forever
I just want to live while I’m alive
(It’s my life)
My heart is like an open highway
Like Frankie said, “I did it my way”
I just wanna live while I’m alive
It’s my life
【和訳】
これが俺の人生さ、今しかない
永遠には生きない
俺は生きている間、人生をただ楽しみたいんだ
(これが俺の人生さ)
俺の心は遮るもののない道のようだ
「俺は自分のやり方で成し遂げた」とフランキーが言ったように
俺は生きている間、人生をただ楽しみたいんだ
[Verse2]
【歌詞】
This is for the ones who stood their ground
For Tommy and Gina who never backed down
Tomorrow’s getting harder, make no mistake
Luck ain’t even lucky, got to make your own breaks
【和訳】
これは逃げ出さなかった人達への歌
一歩も引かなかったトミーとジーナへの歌
明日はますます厳しくなる、間違いない
運任せなんて駄目さ、チャンスは自分で作らなきゃ
[Chorus]
【歌詞】
上記 [Chorus] と同様‘Cause it’s my life
【和訳】
(上記 [Chorus] と同様)
だって、これが俺の人生だから
[Bridge]
【歌詞】
Better stand tall when they’re calling you out
Don’t bend, don’t break, baby, don’t back down
【和訳】
大声で呼ばれた時には、堂々とした方が良い
屈するな、挫けるな、引き下がるな
[Chorus] x2
上記と同様
歌詞の意味・文法解説
[Verse1]
This ain’t a song for the broken-hearted, no silent prayer for the faith-departed.
これは心が傷ついた人への歌じゃない、信念を失った人への無言の祈りでもない
ain’t:= am not、aren’t、isn’t、hasn’t、haven’t
ain’t は否定表現のスラングで「be動詞+not」の省略形、または「助動詞 have/ has+not」の省略形です。
スラングですので丁寧な言葉ではなく、粗野な言い方で、例えば日本語でいえば「ない→ねぇよ」のような感じです。(ただ、日本語の語感とぴったり一致するわけではないので、上記の和訳ではそのままとしています)
silent prayer:黙とう、無言の祈り
broken-hearted:心が深く傷ついている
broken-hearted は形容詞ですが、ここでは名詞の働きをしています。
形容詞は、定冠詞 the をつけて「人」を表すことがあり、このフレーズもそれに当たります。
the broken-hearted:心が深く傷ついた人
faith-departed (信念を失った) についても同様です。
the faith-departed:信念を失った人
複合語
このフレーズで登場する broken-hearted や faith-departed といったハイフンでつながれた単語は、複合語と呼ばれるものです。二つ以上の単語が結合して新たな単語が作られるものです。
broken-hearted の -hearted は通例、複合語のなかで用いられる表現で、「…の心を持った」という意味合いになります。
cold-hearted:心の冷たい、冷淡な
kind-hearted:心の優しい、思いやりのある
broken-hearted:心が深く傷ついている (同上)
一方で、faith-departed の departed は「死去した、亡くなった」という意味の形容詞で、こちらも the をつければ上記で述べたのと同じように名詞になります。
the departed:故人、死者たち
ここに faith (信念、信条) をつけて、信念について死んでしまった人 → 信念を失った人 となるわけです。
I ain’t gonna be just a face in the crowd
大勢の中のただの一人になんかなりたくないんだ
face:人、顔
face は「人」という意味合いもあります。
You’re gonna hear my voice when I shout it out loud
俺が大声で叫べば、俺の声が聞こえるだろう
shout out loud:大声で叫ぶ、怒鳴る
[Chorus]
It’s my life, it’s now or never
これが俺の人生さ、今しかない
曲名ともなっているフレーズです。
訳は上記のように「これが俺の人生さ」という意味です。
なお、このフレーズも含めてこの曲ではあちこちで代名詞 it が使われていますが、いわゆる「状況のit」と呼ばれる用法が殆どです。
状況のit:漠然とした状況で、話し手と聞き手がわかっているような状況を表す
続く it‘s now or never の it も同じ用法です。
とはいえ、It’s my life 「これが俺の人生さ」の it (“これ”が) がいったい何を指しているのかは具体的にはわかりません。
あくまで”漠然とした状況”であって、それ (it) が聞き手にも文脈からきっとわかっているだろう、と話し手が想定しているということです。
now or never:今しかない、今を逃したら後がない
I just want to live while I’m alive
俺は生きている間、人生をただ楽しみたいんだ
live:充実した人生を送る
live は単に「生きる」というだけでなく、人生を十分に楽しむ、充実した人生を送る、という意味でも使われます。
My heart is like an open highway. Like Frankie said, “I did it my way”, I just wanna live while I’m alive
俺の心は遮るもののない道のようだ。「俺は自分のやり方で成し遂げた」とフランキーが言ったように、俺は生きている間、人生をただ楽しみたいんだ
Frankie:フランキー (= フランク・シナトラ)
Frankie は人名 Francis (フランシス) の短縮形です。愛称のようなものですが英語圏では短縮形も本名と同様に扱われることがあるので、日本でいう あだ名 や 通称 とは少し異なるものです。
このフレーズでの Frankie は アメリカの歌手、フランク・シナトラ を指しています。
※ Frank (フランク) も同じく Francis の短縮形
“I did it my way” 「俺は自分のやり方で成し遂げた」は彼の代表曲『My way』の一節です。
フランク・シナトラ (Francis Albert Sinatra) はご存知の通り20世紀を代表する大歌手ですが、ボン・ジョヴィと同じくニュージャージー州出身で、彼への敬意から曲中の一節を引用したそうです。
フランク・シナトラも (ボーカルの) ボン・ジョヴィも歌手であり、映画にも出演する俳優でもありました。
ボン・ジョヴィはそんな彼のことをお手本にしていると語っています。この曲を作詞する際にはバンドメンバーから反対などもあったようですが結局、シナトラについて歌詞に盛り込んだようです。(Wikipedia参照)
ちなみにボン・ジョヴィも本名が John Francis Bongiovi Jr. (ジョン・フランシス・ボンジョヴィ・ジュニア) ですので Frankie (フランキー) です。
シナトラと自分を重ね合わせるのも頷けますね。
highway:主要路、幹線道路
※ 日本でいう「高速道路」は アメリカでは expressway などと言います。
この highway もシナトラの『My way』の次の一節を意識していると考えられます。
『My way』:”I’ve traveled each and every highway” 「俺はあらゆる道を旅してきた」
[Verse2]
This is for the ones who stood their ground, for Tommy and Gina who never backed down
これは逃げ出さなかった人達への歌、一歩も引かなかったトミーとジーナへの歌
stood one’s ground:(威嚇などに) 屈しない、逃げない、地面をしっかり踏みしめる
back down:引き下がる、退却する
Tommy and Gina (トミーとジーナ) はボン・ジョヴィの同じく代表曲である『Livin’ on a Prayer』の登場人物です。
トミーとジーナはこの『It’s My Life』のOfficial Music Video には映像としても登場しますので、ご興味のある方はご覧になってみてください。
Tomorrow’s getting harder, make no mistake
明日はますます厳しくなる、間違いない
make no mistake:間違いない、はっきり言っておきます
警告などの前後に言い添えて、その内容を強める表現です。
mistake のあとに about it などがつくこともあります。
Luck ain’t even lucky, got to make your own breaks
運任せなんて駄目さ、チャンスは自分で作らなきゃ
luck:運、幸運、まぐれ当たり
got to:…しなければならない ( = have to)
break:チャンス、好機
前半部分を直訳すると以下です。
Luck ain’t even lucky
運は幸運ですらない
イマイチ何が言いたいかわからず、少し解きほぐす必要があります。
luck は運・幸運そのもの、lucky は形容詞で運が良い状態のことです。
そして、luck は通例 日常で偶然にもたらされる幸運をあらわし「運」のほかにも「まぐれ当たり、つき」というニュアンスが含まれています。
ですので、上の直訳に補足すると
Luck ain’t even lucky
日常の偶然のまぐれ当りなんかは、運の良いことでさえない
のうようになります。
後半にある break は「休憩、破壊」のほかに「チャンス、好機」といった意味になり、break は chance よりも「特別な機会」というニュアンスが強い言葉ですので、後半部分は「特別な機会は自分自身で作り出さなければならない」ということです。
後半を踏まえて、前半のフレーズをとらえなおせば「特別な何かは自分自身でつくらなければならないから、日常のありふれた偶然は、運の良いことでさえない」ということかと思われます。
上記の和訳では、冗長となるので意訳しています。
[Bridge]
Better stand tall when they’re calling you out
大声で呼ばれた時には、堂々とした方が良い
Better は had better「… したほうが良い」の意味で、このフレーズのように主語や had が省略されることがあります。
stand tall:堂々と立つ、断固なる姿勢をとる
Don’t bend, don’t break, baby, don’t back down
屈するな、挫けるな、引き下がるな
bend:(人を) 屈服させる、従わせる
bend の主要な語義は「曲げる」ですが、そこから派生して上記の意味になります。
break:(人・健康・気力が) 衰える、弱る、挫ける
以上です。
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