この記事では、ザ・チェインスモーカーズのヒット曲『Closer』(クローサー) の歌詞を英語学習を兼ねて、解説します!
英語の洋楽を聴いていて
この歌詞はどういう意味だろう?
和訳はネットで検索すれば出てくるけれど
何故そういうニュアンスになるんだろう?
そんな風に感じたことはありませんか。
この記事を読んで、そんな疑問を解決して頂ければと思います!
概要
『Closer』
クローサー
『Closer』(クローサー)はアメリカのDJデュオ ザ・チェインスモーカーズ (The Chainsmokers) のヒット曲のです。
2016年7月にリリースされ、billboard のチャートで12週連続で1位となりました。
歌詞の内容は「かつて恋人同士だった二人が再開しふたたび惹かれ合う」といったものです。
ボーカルは、男性のパートをチェインスモーカーズのアンドリュー・タガート (Andrew Taggart) が、女性のパートをアメリカの女性シンガーソングライターのホールジー (Halsey) が歌っています。
曲名の『Closer』は「もっと近くに」という意味で、詳しくはこちらをご覧下さい。
※ closer には野球の「抑え投手・抑えの切り札 (クローザー)」の意味もありますが、この曲では上記の意味です。
二人の男女の関係が歌詞の中に細かに織り込まれた曲ですので、この記事がそれらを読み解く一助になれば幸いです。
以下、この記事では英語の文法を交えて歌詞を解説します。
歌詞・和訳
Lyrics
[Verse1]
【歌詞】
Hey, I was doing just fine before I met you
I drink too much
And that’s an issue, but I’m okay
Hey, you tell your friends
It was nice to meet them
But I hope I never see them again
【和訳】
ねえ、君に出会うまでは上手くやっていたんだ
飲み過ぎるのが問題だけど、僕は大丈夫
ねえ、君の友だちにはよろしく言っておいてよ
ただ二度と彼らには会いたくないな
[Pre-Chorus1]
【歌詞】
I know it breaks your heart
Moved to the city in a broke down car
And four years, no calls
Now you’re lookin’ pretty in a hotel bar
And I-I-I can’t stop
No, I-I-I can’t stop
【和訳】
君を傷つけたことは知ってる
壊れた車で街に引っ越して
四年間、電話もなし
今、ホテルのバーで君は綺麗だ
もう止まらないよ
駄目だ、止まらないよ
[Chorus]
【歌詞】
So, baby, pull me closer
In the backseat of your Rover
That I know you can’t afford
Bite that tattoo on your shoulder
Pull the sheets right off the corner
Of the mattress that you stole
From your roommate back in Boulder
We ain’t ever getting older
【和訳】
だから、抱き寄せて
君のローバーの後ろの席で
君には買えない車
君の肩のタトゥーを噛む
シーツをマットレスの隅から引き剥がす
君がボルダーの友達からくすねたやつだ
僕らは決して年を取らないよ
[Post-Chorus]
【歌詞】
We ain’t ever getting older
We ain’t ever getting older
【和訳】
僕らは決して年を取らないよ
僕らは決して年を取らないよ
[Verse2]
【歌詞】
You look as good as the day I met you
I forget just why I left you, I was insane
Stay and play that Blink-182 song
That we beat to death in Tucson, okay
【和訳】
あなたは出合った日と同じように素敵ね
あなたと何故別れたのか忘れたわ、どうかしてた
ここにいて、Blink-182 のあの曲をかけてよ
昔ツーソンで聞き倒したでしょ
[Pre-Chorus2]
【歌詞】
I know it breaks your heart
Moved to the city in a broke-down car
And four years, no call
Now I’m lookin’ pretty in a hotel bar
And I-I-I can’t stop
No, I-I-I can’t stop
【和訳】
あなたを傷つけたことは知ってる
壊れた車で街に引っ越して
四年間、電話もなし
今、ホテルのバーで私は綺麗でしょ
もう止まらないよ
駄目、止まらないよ
[Chorus] >> [Post-Chorus] × 2
上記と同様
歌詞の意味・文法解説
[Verse1]
Hey, you tell your friends it was nice to meet them
ねえ、君の友だちにはよろしく言っておいてよ
主語 you がありますが、このフレーズは命令文とも解釈できます。
命令文で主語 you が付けられるのは、聞き手のこと優しく思いやって、安心させたり、励ますように言う場合があります。
一方で you tell …を現在形の文と考えることもできます。
【別訳】
Hey, you tell your friends it was nice to meet them
ねえ、君は友だちに会えてよかったと言っているね
上記の和訳では文脈から前者としています。
なお、it was nice to meet … は「お会いできてよかった」という決まり文句ですので上記和訳で「よろしく言っておいて」としています。
※ 命令文の主語 youの明示については、以下の書籍にも詳しく解説されています。興味があれば参照してみてください。
『謎解きの英文法 省略と倒置』[Pre-Chorus1]
Moved to the city in a broke down car, and four years, no calls
壊れた車で街に引っ越して、四年間、電話もなし
no calls:
no のあとに続く名詞は、通常なら複数存在すると思われる場合には複数形を、通常1つしか存在しないと思われる場合 (単数のものに注目する場合) は単数形を用います。
このフレーズでは、calls と複数形で、男性 (アンドリュー・タガート)の歌うパートですので、“彼” は電話や連絡が複数あることを通常と思っていた (そして、なかった)、ということです。
たとえば、”彼” は “彼女” へ何度か電話しようとしたのかもしれないですし、”彼女” のほうから何度か電話がかかってくると思っていたのかもしれません。(でも、しなかったし、なかった)
no call:
このフレーズとほとんど同じ歌詞が、女性 (ホールジー)の歌うパートの [Pre-Chorus2] にも登場します。
そちらでは call と単数となっており、“彼女” は電話や連絡があっても1回程度が通常と思っていた (そして、なかった)、ということです。
たとえば、”彼女” は “彼” へ一度くらい電話しようとしたのかもしれないですし、”彼” のほうから一度くらいは電話がかかってくると思っていたのかもしれません。(でも、しなかったし、なかった)
[Chorus]
So, baby, pull me closer in the backseat of your Rover that I know you can’t afford
だから、抱き寄せて、君のローバーの後ろの席で。君には買えない車
曲名となっている closer が含まれたフレーズです。
closer は「もっと近くに」という意味です。
pull me closer を直訳すると「私をもっと近くに引き寄せて」です。
私見ですが、この曲での closer について下記の『Closer とは?』にコメントしました。
ご興味あれば一読してみてください。
Rover:レンジローバー
レンジローバーは、英国王室御用達の高級SUV車です。
SUV (アウトドアレジャー等に使われる車) の中でもレンジローバーは大型の車種です。
afford:…を買う余裕がある
you (つまり”彼女”) が自分では買えない車と言ってますので、他の誰かから買ってもらったか、借りたものと考えられます。
この車、レンジローバーはある程度、高い年齢層が乗ることが多い車です (40〜50代以上?)。
あとの歌詞に出てくるBlink-182 (2000年前後に若者に流行ったパンクバンド)を聞いていたり、ルームメイトとの生活をしていた点から、you (“彼女”) は若い女性と考えられます。
誰かが買ってくれるとすれば、若い女性に対してレンジローバーという車種は普通、あえて選ばないでしょう。
ですので、経済的に恵まれた家庭で、親などから借りた車と推測できます。
Closer とは?
別れた彼女がレンジローバー (Rover) に乗っている一方で、彼氏は壊れた車 (broke down car) に乗っていて、彼女の友達にはもう会いたくない… (I hope I never see them again)。
どうやら二人の住むコミュニティには隔たりがあるようです。
このようにこの『Closer』という曲の歌詞には、二人の微妙な距離感が、散りばめられています。
それでもその距離を縮めたい、もっと近くに (closer) という切なさや、抑えきれない勢いがつたわってくる歌詞です。
少しうがった見方かもしれませんが…。今の時代、当たり前のようにインターネットで遠く離れた所の人や、自分とは異なる環境や立場の人と、比較的容易にやり取りできるようになりました。
ましては文化的モザイクやサラダボウルとも呼ばれる、様々なコミュニティを包含するアメリカでは、異なる者同士がお互いの隔たりや距離を超えて、もっと近くに (closer) と想う感情は、とても大切なものなのかもしれません。
逆さまにとらえると、お互いに魅かれ合うけど、同じにはなれない…、悲劇的にも皮肉のようにもなってくるのですが、そんなことも度外視してしまうような若い二人の熱量が、綺麗に詰めこまれた曲だと思います。
Pull the sheets right off the corner of the mattress that you stole from your roommate back in Boulder
シーツをマットレスの隅から引き剥がす、君がボルダーの友達からくすねたやつだ
right off:すぐに、直ちに
Pull the sheets … mattress は、マットレスに掛かったシーツを素早く引っ張って抜き取る (引き剥がす) ようなことと思います。
Boulder:ボルダー (アメリカ コロラド州の都市)
[Post-Chorus]
We ain’t ever getting older
僕らは決して年を取らないよ
ain’t:= am not、aren’t、isn’t、hasn’t、haven’t
ain’t は否定表現のスラングで「be動詞+not」の省略形、または「助動詞 have/ has+not」の省略形。
スラングですので丁寧な言葉ではなく、粗野な言い方です。
このフレーズもそうですし、[Chorus] での拝借したルームメイトのシーツのくだりから、若さからの勢いが感じられます。
[Verse2]
I forget just why I left you, I was insane
あなたと何故別れたのか忘れたわ、どうかしてた
leave:(恋人・夫・妻) と別れる、見捨てる
leave は「…を出る (出発する)、…を去る」以外に上記のように恋人を振るといった意味合いもあります。
女性 (ホールジー)の歌うパートですので、”彼女” のほうが “彼” を振ったということですね。
insane:頭がおかしい、正気とは思えない
Stay and play that Blink-182 song that we beat to death in Tucson, okay
ここにいて、Blink-182 のあの曲をかけてよ。昔ツーソンで聞き倒したでしょ
Blink-182 は上でも少し触れましたが、2000年前後に若者に流行ったパンクバンドで、Blink-182 の曲「I Miss You」にインスピレーションを得てこの曲『Closer』は創られたそうです。
beat A to death:A を撲殺する
何かを死ぬまで叩く、という意味です。
ヘビーローテーションで何度も聞いたということの比喩的な表現でしょう。
beat の目的語 (A) は that Blink-182 song で、それを先行詞として関係代名詞 that で修飾しています。
beat (不規則動詞) は文脈から過去形と考えられます。
Tucson:ツーソン(アメリカ アリゾナ州の都市)
この曲では、アメリカの都市の名前が2つ登場します。
このツーソンとボルダーです。
アリゾナ州とコロラド州は隣り合っていますが、2つの都市は凡そ1500km程離れています。
東京から沖縄 (那覇) までと同じくらいの距離のようです。
[Pre-Chorus2]
Moved to the city in a broke-down car and four years, no call
ボロボロの車で街に引っ越して、四年間、電話もなし
Moved という動詞の主語は文脈から、”彼” (“彼女”からみた you ) になると思われます。
no call については [Pre-Chorus1] で詳しく解説していますので、そちらをご覧下さい。
以上です。
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