この記事では、あのビートルズの名曲『Let It Be』(レットイットビー)の歌詞を英語学習を兼ねて、深堀りして解説します!
英語の歌詞を読んでいて、これはどういう意味だろう? 和訳は検索すれば出てくるけれど何故そういうニュアンスになるんだろう? そんな風に感じたことはありませんか?
この記事を読んで、そんな疑問を解決して頂ければと思います!
曲名の『Let It Be』の、その意味は「なすがままに」(命令文)、「成りますように」(祈願文) という二つの解釈ができます。(詳しい解説はこちら!)
その概要、歌詞にあるマリアとは誰なのか? タイトルでもある『Let It Be』とは何を意味するのか? じっくり解説していきます。
概要解説
『Let It Be』
(レット・イット・ビー)
『Let It Be』 ( レットイットビー )はイギリスのロックバンド、ビートルズ ( The Beatles ) の楽曲。 ビートルズが活動中に発売したラストシングルです。言わずと知れた名曲ですね。
作詞作曲はポール・マッカートニー ( Paul McCartney ) 、レノン=マッカートニー名義となっていますが、作詞・作曲すべてポールによるもので、リード・ボーカルも彼です。
ビートルズの通算22枚目のシングルとして、1970年3月にリリース。ビートルズ解散後に発表された最後の同名のアルバム「Let It Be」に収録されています。
この記事では英語の文法を中心に解説します。
※レノン=マッカートニー名義:ジョン・レノン ( John Lennon ) とポール・マッカートニーの共同名義。ジョン・レノンとの15歳のときの約束で二人の名前で曲をだすことになっていたそうです。
歌詞・和訳
Aメロ1 [Verse1]
歌詞
When I find myself in times of trouble
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom, let it be
And in my hour of darkness
She is standing right in front of me
Speaking words of wisdom, let it be
和訳
自らの苦境に気付くと
聖母マリアがやってきて
貴い言葉をくださる、「なすがままに」
暗闇の中にいると
彼女は私の前に立って
貴い言葉をくださる、「なすがままに」
サビ [Chorus]
歌詞
Let it be, let it be, let it be, let it be
Whisper words of wisdom, let it be
和訳
「なすがままに」、「なすがままに」
貴い言葉をささやく、「なすがままに」
Aメロ2 [Verse2]
歌詞
And when the brokenhearted people living in the world agree
There will be an answer, let it be
For though they may be parted, there is still a chance that they will see
There will be an answer, let it be
和訳
世界で失意の底にいる人々が心を一つにするとき
ひとつの答えがあるだろう、「なすがままに」と
何故なら、離れ離れになるかもしれないけれど、出会えるチャンスはまだあるのだから
ひとつの答えがあるだろう、「なすがままに」と
サビ [Chorus] x2 (同上)
※上記の繰り返し
Aメロ3 [Verse3]
歌詞
And when the night is cloudy, there is still a light that shines on me
Shine until tomorrow, let it be
I wake up to the sound of music
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom, let it be
和訳
曇った夜にも私を照らす光がある
明日まで輝く光、「あるがままに」と
音楽で目が覚めると
聖母マリアがやってきて
貴い言葉をくださる、「なすがままに」
サビ [Chorus] x2
※上記の繰り返し
文法・意味 解説
【マリアとは誰?】
Aメロ1 [Verse1]
When I find myself in times of trouble, Mother Mary comes to me
自らの苦境に気付くと、聖母マリアがやってきて
find oneself in: 気が付くと … にいる
知らないうちに、いつの間にか、気付くと … だというような意味です。
例えば急に体の具合が悪くなって倒れて、気付いてみると病院のベッドにいた、などという表現は
ですし、find oneself doing と 動名詞 (-ing) を oneself のあとにつけることもあります。
in times of trouble : 苦境の時に、困難の時に
Mother Mary :
上記の訳では「聖母マリア」としましたが、キリスト教で言うイエス・キリストの聖母をそのままズバリ指す場合に英語では ( Mother Mary ではなく )、
the Virgin Mary : 処女マリア
Saint Mary: 聖女マリア
Our Lady : 我らが貴婦人
などと呼ぶことが多いようです。
また、ポール・マッカートニーは、彼の亡き実母メアリー・マッカートニーが夢に現れて Let it be のようなニュアンスのことを告げてくれた、ということを元にしてこの曲を作曲したと語っており
加えて、ゴスペル調 (※)にアレンジされた曲、英文では (そのままズバリではないにせよ…) Mother Mary は聖母マリアをイメージする言葉のため
曲中の 「Mother Mary」 は実は一種のダブルミーニング ( 聖母 / 実母 ) となっているようです。
※ゴスペル … アメリカ発祥のキリスト教的な民族音楽
Speaking words of wisdom, let it be
貴い言葉をくださる、「なすがままに」
word of wisdom:格言、名言
let it be :
タイトルでもあるこの歌詞 let it be も、 Mother Mary と同様に2つの解釈ができると思います。
結論から言えば以下のように、命令文、祈願文 の2つの解釈ができます。
命令文として解釈した場合
let it be の意味:
なすがままに、成り行きに任せなさい、放っておきなさい
使役動詞 let + 目的語 + 動詞原形 で「 (目的語) が (動詞) することを許す 」
という意味になります。命令形ですので let it be を直訳すれば
「 それが存在することを許しなさい 」
⇒ 「 なすがままに 」
というわけです。
上の和訳は命令文として訳しています。
命令文として解釈した場合、
現れた Mother Mary が 曲中の 私 (”I”) に対して指図 (助言) をして「なすがままにしなさい、成り行きに任せなさい」と言っているわけです。
祈願文として解釈した場合
let it be の意味:
(神様の御心のままに) どうか成りますように
この曲は上記のように聖母マリアを連想する曲であり、この歌詞 let it be も聖書の受胎告知を引用している、という見方ができるようです。
※受胎告知 … 聖母マリアが聖霊に妊娠を告げられ、それを受け入れる出来事
引用されたとされる箇所は、以下の新約聖書 ”ルカによる福音書” 1章38節
時代が経つにつれ、以下① → ② の太字部ように表現に変遷があります。
( let it be から may it be に変わっていった)
また、あわせて日本語の口語訳聖書 ③ を併記しますので、以下①~③の太字の箇所をご覧ください。
新約聖書 ”ルカによる福音書” 1章38節
言語:英語
① [改訂標準訳聖書 (RSV) ] 新約聖書 1946年 出版
And Mary said, “Behold, I am the handmaid of the Lord; let it be to me according to your word.” And the angel departed from her
② [新アメリカ標準訳聖書 (NASB) ] 新約聖書 1963年 出版
And Mary said, “Behold, the bondslave of the Lord; may it be done to me according to your word.” And the angel departed from her.
言語:日本語
③ [口語訳聖書] 新約聖書 1954年
そこでマリヤが言った、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」。そして御使は彼女から離れて行った。
わかりやすいので、③日本語 → ② 1963年 出版→ ① 1946年 出版 の順で解説します。
上記の赤線の箇所が let it be に該当する箇所です。
上記の ③ 日本語訳の表現「成りますように」からもわかるように、聖書での let it be は命令文ではありません。
これは「どうか … でありますように」と祈願をあらわし、祈願文と呼ばれるものです。
祈願文は
may + 主語 + 動詞原形 (上記②)
という構文です。つまり、上記の② です。この祈願文の構文は学生時代に習った方もいるのではないでしょうか?
そして、さらに時代を遡ると let が祈願の表現として使われており、それが上記の① で構文は以下です。
let + 主語 + 動詞原形 (上記①)
この祈願文がこの曲での歌詞 let it be であると解釈できるわけです。
祈願文として解釈した場合、
現れた Mother Mary は 曲中の 私 (”I”) に対して指図するわけではなく、ただ神に祈りを捧げて「どうか神様の御心のままに成りますように」と願っているわけです。
サビ [Chorus]
whisper :ささやく
Aメロ2 [Verse2]
brokenhearted:心が傷ついている、失意の底にいる
agree: 同意する、仲良くやっていく
For though they may be parted, there is still a chance that they will see
何故なら、離れ離れになるかもしれないけれど、出会えるチャンスはまだあるのだから
for: というのは … だから、その理由は … だから
この for though they may … の箇所の for は 接続詞 です。この接続詞 for は前の文の理由・根拠を補足します。かたい表現で文語で使われます。
つまり、前後の流れをあわせると、この部分の歌詞の文法的な役割は以下です。
- 副詞節①
-
And when the brokenhearted people living in the world agree
- 主節①
-
There will be an answer, let it be
- 副詞節②
-
For though they may be parted, there is still a chance that they will see
- 主節①’
-
There will be an answer, let it be
この歌詞では 副詞節② が後ろから前文の 副詞節① + 主節① の理由・根拠を説明しているわけです。
副詞節① + 主節①
『…心を一つにするとき…答えがある …』
副詞節②
『(For) 何故なら…出会えるチャンスがあるからだ』
というわけです。
なお、though (けれども、にもかかわらず) は、they may be parted と、 there is still … see の二つの節 (上記の緑字) をつなげる逆接の接続詞です。
サビ [Chorus] x2 (同上)
※上記の繰り返し
Aメロ3 [Verse3]
wake up to: … で目覚める
サビ [Chorus] x2
※上記の繰り返し
英語学習のおすすめ書籍
『Let It Be』の歌詞を英語学習を兼ねて、解説してきましたが、いかがでしたでしょう。
最後に、よく聞かれるので、筆者が英語学習にこれまで特によく使ったおすすめ書籍をご紹介します。
どれも定番です。
この記事のような解説を書く際にも参照することがあります。
まず英文法の基礎はこちら。
昔はフォレストという名前でしたが、いつの間にか名前が変わっていましたね。
さらに詳細な英文法書。
以上です。
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