この記事では、U2の名曲『With Or Without You』の歌詞を英語学習を兼ねて、解説します!
英語の洋楽を聴いていて
この歌詞はどういう意味だろう?
和訳はネットで検索すれば出てくるけれど
何故そういうニュアンスになるんだろう?
そんな風に感じたことはありませんか。
この記事を読んで、そんな疑問を解決して頂ければと思います!
概要
『With Or Without You』
ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー
『With Or Without You』 (ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー)はアイルランドのロックバンド、U2 の代表曲です。
5thアルバム『ヨシュア・トゥリー』の先行シングルとして1987年にリリースされました。
曲名の「With Or Without You」は、訳すと “あなたがいても、いなくても“ という意味。
力強いボノ (Bono) のボーカルと、ディレイエフェクト駆使した奥行きのあるエッジ (The Edge) のギターというU2の魅力がつまった曲です。
U2の曲全般に言えることですが、歌詞も聞き取りやすく、語彙もシンプルで英語初学者にもおすすめです。
この曲はシンプルさとは、裏腹に歌詞の内容は、「異なる宗派での恋愛」、「信仰のゆらぎ」、「人間の心の葛藤」などといった様々な解釈ができ、興味深いものとなっています。
以下、この記事では、それらのどれか一つには限定せず、解釈するためのヒントとなることを英語学習とともに記載しました。
読者の皆さんが、各々で聴いて解釈し、この曲を楽しむ一助になれば幸いです。
歌詞・和訳
Lyrics
[Verse1]
【歌詞】
See the stone set in your eyes
See the thorn twist in your side
I’ll wait for you
Sleight of hand and twist of fate
On a bed of nails she makes me wait
And I wait, without you
【和訳】
あなたの目につけられた石を見てみなよ
あなたに絡まった茨を見てみなよ
僕はあなたを待っている
巧妙なごまかしと運命のいたずら
針のむしろで彼女は僕を待たせる
そして僕は待つ、あなたがいなくても
[Chorus]
【歌詞】
With or without you
With or without you
【和訳】
あなたがいても、いなくても
あなたがいても、いなくても
[Verse2]
【歌詞】
Through the storm we reach the shore
You give it all but I want more
And I’m waiting for you
【和訳】
嵐を通り抜け僕らは岸にたどり着く
あなたはすべてを与えても僕はそれ以上を望む
僕はあなたを待っている
[Chorus]
【歌詞】
With or without you
With or without you
I can’t live
With or without you
【和訳】
あなたがいても、いなくても
あなたがいても、いなくても
僕は生きていけない
あなたがいても、いなくても
[Bridge]
【歌詞】
And you give yourself away
And you give yourself away
And you give
And you give
And you give yourself away
【和訳】
そして、あなたは正体をあらわす
そして、あなたは正体をあらわす
そして、あなたは
そして、あなたは
そして、あなたは正体をあらわす
[Verse3]
【歌詞】
My hands are tied
My body bruised,
She’s got me with
Nothing to win and
Nothing left to lose
【和訳】
僕の両手は縛られ
僕の身体は傷つき
彼女は僕を手に入れ
得るものも
失うものもなくしてしまう
[Bridge]/[Chorus Outro]
上記と同様
歌詞の意味・文法解説
[Verse1]
See the stone set in your eyes
あなたの目につけられた石を見てみなよ
歌詞の冒頭。出だしから想像が膨らむ表現ですね。
目に石がつけられているのですから、you (あなた) が周りが見えなくなっている、頑なになっている、ということがイメージできます。
ここでの set は、過去分詞で the stone を後ろから修飾しています。
set は不規則動詞で、原形・過去形・過去分詞が全て set で同じつづりです。
you (あなた) は誰?
歌詞全体をみると you は様々な解釈ができそうです。
you に当てはまりそうなものは…
恋人、友人、神、自分自身、酒、薬物…etc
などなど、人間が依存してしまうような対象が該当し、それに対する葛藤を描いた歌詞と思います。
ただ、Wikipediaには以下のように書かれており、ボーカルのボノ本人がこのように語っていることを踏まえて解釈するのが自然かと思います。
“ロックスターの生活と普通の家庭生活の板挟みになって悩んでいた、当時の心境を綴った”
Wikipedia参照
See the thorn twist in your side
あなたに絡まった茨を見てみなよ
thorn in one’s side:悩みの種
直訳すると「横腹に刺さったトゲ」ですが、悩みの種、という意味の比喩です。
この慣用句に twist を加えたのがこのフレーズと思います。
似た表現の thorn in the flesh (肉に刺さったトゲ)と同じ意味で、聖書に由来する表現です。(Wikipedia)
聖書のこの「トゲ」は、迫害、病気…を意味するなど諸説あるようですが、現代では上記のように「悩みの種」「絶えず苦しめいら立たせるもの」といった意味で使われます。
英語訳聖書
And lest I should be exalted above measure through the abundance of the revelations, there was given to me a thorn in the flesh, the messenger of Satan to buffet me, lest I should be exalted above measure.
[欽定訳 (KJV) ] 新約聖書 コリント人への第二の手紙12:7
日本語訳聖書
そこで、高慢にならないように、わたしの肉体に一つのとげが与えられた。それは、高慢にならないように、わたしを打つサタンの使なのである。
[口語訳聖書] 新約聖書 コリント人への第二の手紙12:7
(上の聖書にある“わたし”は、キリスト教の使徒パウロのことだそうです。)
thorn:トゲ、茨、悩みの種
thorn だけでも「悩みの種」という意味になります。
twist:絡みつく、ねじれる
Sleight of hand and twist of fate
巧妙なごまかしと運命のいたずら
Sleight of hand:巧妙なごまかし、手品、早業
Sleight は古い言葉で、この単語のみでも「早業、ペテン」といった意味ですが、今では通例このフレーズのように Sleight of hand という熟語で使われます。
twist of fate:運命のいたずら、思わぬ展開
[Chorus]
I can’t live with or without you
僕は生きていけない、あなたがいても、いなくても
曲名となっている部分。
曲名の「With Or Without You」は、訳すと “あなたがいても、いなくても” です
とどのつまり、you の存在に関係なく生きていけないわけです。
ならば、with or without you と添えているのは、その無関係をあえて強調することで、無関係であること、もしくは、無関係かもしれないことの意外さを表現していると思います。
つまり、裏を返せば、you は生きる拠り所となると今迄は思っていた対象と推測できます。
でも今はそれを揺るがすような目の前に立ちはだかる問題があり、I can’t live (僕は生きていけない) ということでしょう。
[Bridge]
And you give yourself away
そして、あなたは正体をあらわす
give oneself away:正体をあらわす、内心をさらけ出す、ボロを出す
give away には、「不要のものを譲る、手放す」「秘密をばらす」といった意味があり、そこに自分自身 oneself を組み合わせると、この歌詞のような表現になるわけです。
同様の「正体をあらわす」の意味では、以下の表記などもあります。
show one’s true colors
show oneself
[Verse3]
My body bruised
僕の身体は傷つき
bruise:あざができる、心が傷つく
bruise はあざなど打撲による怪我です。
こちらを含め、混同しやすいものとしては…
- injury
-
事故などによる怪我
- wound
-
武器などによる怪我
- bruise
-
あざなど打撲による怪我
…といった単語があります。この機に覚えてしまいましょう!
She’s got me with nothing to win and nothing left to lose
彼女は僕を手に入れ、得るものも、失うものもなくしてしまう
She’s got me:
she’s got me は上の和訳のように直訳すれば「彼女は私を手に入れた」ですが、恋愛話のような文脈ならば、「彼女にべた惚れだ」という意味なります。
『You Really Got Me』というロックバンドのTHE KINKSの曲もありましたね。(人によってはVan Halenのカバー版のほうを知っているかも)
こちらの曲では、you really got me は、「おまえにもうメロメロだ」のような意味です。
違った文脈では「すっかりしてやられた」「参った」という意味にもなります。
with 以降は何を修飾しているのか?
二通り考えられます。
- 動詞 got を修飾
-
ひとつは、with が動詞 got を修飾する場合 (つまり with nothing … 以降が副詞句になっているならば)、「彼女 (she) が得るものも、失うものもなくしてしまう」ということになります。
- 目的語 me を修飾
-
もうひとつは、with が目的語 me を修飾する場合、「僕 (me) が得るものも、失うものもなくしてしまう」ということです。
この曲の中では、[Verse1] でも On a bed of nails she makes me wait (針のむしろで彼女は僕を待たせる) とあり、常に「彼女 (she)」は、優位・上手の存在になっている文脈のほうが整合がとれるとすると、後者の方がしっくりくると思います。
ちなみに、私は気付きませんでしたが、代名詞 she は、[Verse1] の “Sleight of hand and twist of fate” (巧妙なごまかしと運命のいたずら) を指す、という解釈もあるようです。
you が依存の対象を指すとするならば、she は目の前に立ちはだかる問題そのものでしょうか。
以上です。
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