この記事では、ジョン・デンバーの名曲『Take Me Home, Country Roads』(カントリー・ロード) の歌詞を英語学習を兼ねて詳しく解説します!
多くのミュージシャンにもカバーされ、日本ではジブリアニメ『耳をすませば』の主題歌(歌:本名陽子)の原曲として記憶に残っている方も多いでしょう。
また、2019年のラグビーワールドカップ (日本開催) でもこの曲の替え歌「ビクトリーロード」が評判になりましたね。
好きな洋楽で
この歌詞はどんな意味なんだろう?
和訳はネットで検索すれば何種類もヒットするけれど
何故そういうニュアンスになるんだろう?
そんなふうに疑問に思うことはないでしょうか。
この記事を読んで、そんな疑問を解決して頂ければと思います!
『Take Me Home, Country Roads』
カントリー・ロード
(故郷へかえりたい)
『Take Me Home, Country Roads』 ( 邦題:故郷へかえりたい / カントリー・ロード )はアメリカのシンガーソングライターの ジョン・デンバー (John Denver) の代表曲のひとつです。
作詞・作曲は、ジョン・デンバー、 ビル・ダノフ(Bill Danoff)、タフィー・ナイバート(Taffy Nivert)による共作。繰り返して歌詞の中にウェストヴァージニア州が登場するため、同州の4番目の州歌にもなっています。
ちなみに、原曲では、故郷(ウエストバージニア)を懐かしみそこに帰りたいと願う歌ですが、ジブリアニメ『耳をすませば』の主題歌 日本語歌詞での『カントリー・ロード』は、故郷には戻らないと寂しさに耐えて決意するという内容となっています。
以下、この記事ではアメリカの地理などを踏まえつつ英語の文法を中心に解説します。
歌詞・和訳
カントリー・ロード
Aメロ1 [Verse1]
歌詞
Almost Heaven, West Virginia
Blue Ridge Mountains, Shenandoah River
Life is old there, older than the trees
Younger than the mountains, growing like a breeze
和訳
ほとんど天国、ウェストヴァージニア
ブルーリッジ山脈に、シェナンドー川
そこでの暮らしは古い、木々より古く
山々より若く、そよ風のように育まれる
サビ [Chorus]
歌詞
Country roads, take me home
To the place I belong
West Virginia, mountain mama
Take me home, country roads
和訳
田舎道、僕を家に連れていってくれ
僕のいるべき場所に
ウェストヴァージニア、母なる山
僕を家につれていってくれ、田舎道
Aメロ2 [Verse2]
歌詞
All my memories gather ’round her
Miner’s lady, stranger to blue water
Dark and dusty, painted on the sky
Misty taste of moonshine, teardrop in my eye
和訳
僕のあらゆる思い出は彼女のまわりに集う
坑夫の婦人、青い海原を知らぬ人
暗く埃まみれで、空に描かれる
かすんだ味の密造酒、目に涙があふれる
サビ [Chorus] x1 同上
上記と同様
Cメロ [Bridge]
歌詞
I hear her voice in the morning hour, she calls me
The radio reminds me of my home far away
Driving down the road, I get a feeling
That I should have been home yesterday, yesterday
和訳
朝の時間に彼女の声が聞こえる、僕を呼んでいるんだ
ラジオを聞くと、遠い故郷を思い出す
この道で車を走らせていると、頭にうかぶ
昨日にでも家に帰るべきだったんだ
サビ [Chorus] × 2 >> エンディング [Outro]
上記と同様
歌詞・和訳 ・文法・意味 解説
カントリー・ロード
Aメロ1 [Verse1]
Almost Heaven, West Virginia
ほとんど天国、ウェストヴァージニア
almost:ほとんど、およそ、大体
ここの歌詞 Almost heaven (ほとんど天国) は、ウェストヴァージニアに住む人が、自然に恵まれた土地を自慢するときに使われる表現で、観光のためのスローガンにもなったそうです。
West Virginia :ウェストヴァージニア州
アメリカ合衆国 東部の内陸州。
この歌に繰り返し登場する州ですね。
アパラチア山脈中に位置することから山岳州 (Mountain State) という愛称でも知られています。
Blue Ridge Mountains, Shenandoah River
ブルーリッジ山脈に、シェナンドー川
Blue Ridge Mountains:ブルーリッジ山脈
上記のアパラチア山脈の一部です。
Shenandoah River:シェナンドー川
ブルーリッジ山脈の東側を流れる川。
実際にはウェストヴァージニア州には、ブルーリッジ山脈はかかっていないし、シェナンドー川もわずかにかすめているだけです。ただし、その両方を一望できる場所はウェストヴァージニア州にあるそうです。
Life is old there, older than the trees
Younger than the mountains, growing like a breeze
そこでの暮らしは古い、木々より古く
山々より若く、そよ風のように育まれる
このフレーズ一行目では、カンマのあとに形容詞があり (, older) いろいろな解釈もできますが、
英文法の構文を素直にあてはめるとbe動詞の現在分詞 being を省略した分詞構文になると思います。
二行目の Younger も同様です。末尾の growing … も分詞構文ですね。
省略された being を補うと以下です。
Life is old there, (being) older than the trees, (being) younger than the mountains, growing like a breeze
分詞構文は、理由・原因、条件、付帯状況、出来事の継起 を表しますがここでは文脈から付帯状況を意味すると捉えられます。
付帯状況は、同時に起こっている事柄を補足的に説明して、「~して」「~しながら」などと訳されます。
【例文】付帯状況の分詞構文
I was lying in bed, watching TV.
私はベッドで横になって、テレビを見ていた。
また、分詞構文では、原則としては意味上の主語は、文の主語と一致します。
ですので、このフレーズでは、older, younger, growing それぞれの主語は Life (暮らし・生活) です。
grow:育つ、成長する
breeze:そよ風、微風
サビ [Chorus]
Country roads, take me home
To the place I belong
田舎道、僕を家に連れていってくれ
僕のいるべき場所に
country road:田舎の道
曲のタイトルともなっている歌詞ですね。
この曲は、メリーランド州のクロッパーロード (Clopper Road) という道を運転中にインスピレーションを得て作られたそうです。ウェストヴァージニア州ではないのが意外ですね。
実は作曲者であるビル・ダノフ (Bill Danoff) らは、ウェストバージニア州に行ったことがなかったのですが詳しくは Cメロ の"TIPS" を参照ください。
belong:(人が) いるべき所にいる、… に所属する
country という言葉には、「田舎」以外に「国」という意味があることはご存知と思います。
country は、ラテン語 contrata terra(向こう側の土地)が語源で、中世の貴族達のもつ地方の領地を指して country という言葉が使われ、そこから「国」や「田舎」といった意味になったようです。
領地・所有地という意味が拡大して「国」となり、都市住民からみた地方という意味から「田舎」となったというわけです。
Aメロ2 [Verse2]
⚓
All my memories gather ’round her
Miner’s lady, stranger to blue water
僕のあらゆる思い出は彼女のまわりに集う
坑夫の婦人、青い海原を知らぬ人
her, lady といった女性を表す言葉がでてきます。
そのまま誰か人間の女性を指すと考えても良いですが
前述のサビの歌詞に、mountain mama (母なる山) とあること、また上述のようにウェストヴァージニアは山岳州とよばれていることから
her / lady は、mountain (山) あるいは West Virginia (ウェストヴァージニア州) を指すと考えられます。
英語では、山・太陽を he 、 国・月・乗り物を she 、 で受ける場合もありますが、この曲では mountain mama なので 山は she/her でしょう。
miner:炭鉱労働者、坑夫
現在でもウェストヴァージニア州の主要な資源のひとつは石炭で、この miner という言葉も同州に紐づいています。
lady が上記のように山を指しているとすると Miner’s lady は「鉱山」とも解釈できると思います。
stranger:(場所・土地に) 不慣れな人、知らない人
blue water:大海原、青海原、海
Aメロ1でも触れましたが、ウェストヴァージニアは内陸州で、海に面していません。
ここからも上記のように her / lady は、mountain (山) あるいは West Virginia (ウェストヴァージニア州) を指すと考えられるでしょう。
また、ウェストヴァージニア州は隣接するバージニア州から分かれてできたのですが、バージニアという州名はイギリスの the Virgin Queen 処女王 エリザベス1世に由来しており、その州名からも 女性を連想します。
Dark and dusty, painted on the sky
暗く埃まみれで、空に描かれる
dusty:ほこりまみれの、くすんだ
過去分詞 painted 以下も分詞構文です。
さて、この過去分詞 painted (描かれる) の意味上の主語、つまり"描かれるもの"は何でしょう?
候補としてあげられるのは、① All my memories、 ② Miner’s lady (もしくは her ) の2つの名詞ですが
※ blue water は文脈から不可。Dark and dusty は形容詞のため不可
それぞれ当てはめて訳すと
①:
All my memories are painted on the sky
僕のあらゆる思い出が空に描かれる
②:
Miner’s lady is painted on the sky
抗夫の婦人 (=鉱山) が空に描かれる
①ならば比喩的・叙情的な、②ならば鉱山が空を背景にそびえる写実的な表現ですね。
文法の原則としては文の主語である①ですが、①と②どちらにも解釈できると思います。
Misty taste of moonshine, teardrop in my eye
かすんだ味の密造酒、目に涙があふれる
misty:霧の、ぼやけた
moonshine:密造酒、月光
moonshine は密造酒を意味する俗語です。
18世紀末にアメリカの政府がウィスキーに重税を課したため、月光のもとでこっそり作ったことから moonshine 「月光」と呼ぶようになったそうです。
日本でいう「どぶろく」ですね。
teardrop:涙の粒
なぜ涙がでるのでしょう?
ひとつ前のフレーズでは Dark and dusty (暗く埃まみれ) とあり、さらに密造酒をこっそり飲まなくてはならい…、とあまり恵まれた環境ではないと想像できます。
ウェストヴァージニア州は、アメリカの国勢調査によるとアーカンソー州・ミシシッピ州に次いで、一人当たりの収入が3番目に低い州で、そういった貧しさにもよるものなのかもしれません。
Aメロ2は故郷のネガティブな面も書きだしていますが、でもやはり郷愁があるという歌詞に読めます。
Cメロ [Bridge]
I hear her voice in the morning hour, she calls me
朝の時間に彼女の声が聞こえる、僕を呼んでいるんだ
ここにも her / she という女性を表す人称代名詞がでてきます。
これらが何を指しているのか、解釈はさまざまですが、考えられるのは下記です。
her / she 「彼女」は何を指しているか?
①:
次のフレーズにあるラジオから聞こえる声・その女性
②:
mountain (山) あるいは West Virginia (ウェストヴァージニア州) を指している
※ Aメロ2参照
③:
歌い手と近しい間柄の人間 (母親など)
①~③のどれとしても良いと思いますが、次に記載する作曲の裏話に触れると、上記①に思えてしまいます。
⚓
The radio reminds me of my home far away
ラジオを聞くと、遠い故郷を思い出す
the radio:
radio は「ラジオ」をですがラジオ本体・受信機ではなく、ラジオ放送・ラジオ番組 を表す場合には 通例 the radio と定冠詞 the をつけます。
remind (人) of … : (人) に … を思い出させる
【TIPS】
ここで唐突にラジオ放送・番組が登場してきますが、これは『ウィーリングジャンボリー』( Wheeling Jamboree ) というラジオ放送をほのめかしているようです。( 参照:wikipedia link1, link2 )
『ウィーリングジャンボリー』( Wheeling Jamboree ) は、1933年にウェストバージニア州で始まったアメリカで2番目に古いカントリーミュージックのラジオ放送です。
実は作曲者であるビル・ダノフ (Bill Danoff) は、ウェストバージニア州に行ったことがなく、はじめは自身が住んでいたマサチューセッツ州を歌詞に入れることを検討していたのですが、それでは叙情的ではないため、ラジオ放送『ウィーリングジャンボリー』を聞いて、「ウェストバージニア」(West Virginia) が音節・リズムにも合うということで歌詞に採用したそうです。
ちなみに、マサチューセッツ州はアメリカが誕生してから政治・経済・商工業・文化・教育の中心地ですから田舎 (country) ではないですね。
Driving down the road, I get a feeling
That I should have been home yesterday, yesterday
この道で車を走らせていると、頭にうかぶ
昨日にでも家に帰るべきだったんだ
I get a feeling 以降はひと続きで、that は"同格のthat"で feeling (感覚、気持ち) の内容を説明しています。
I get a feeling that I should have been home yesterday, yesterday
また、should have + 過去分詞 (been) は"過去の行為に対する非難や後悔"を表し、「… すべきだったのに (実際はしなかった) 」という意味で、過去に実行されたなかったことに対する非難や後悔の気持ちを表します。
should have + 過去分詞: … すべきだったのに (実際はしなかった)
※文脈によっては別の意味にもなります。
【例文】
You should have got up at six.
あなたは6時に起きるべきだったのに (実際は起きなかった)
英語学習のおすすめ書籍
『Take Me Home, Country Roads』 ( 邦題:故郷へかえりたい / カントリー・ロード )の歌詞を英語学習を兼ねて、解説してきましたが、いかがでしたでしょう。
最後に、よく聞かれるので、筆者が英語学習にこれまで特によく使ったおすすめ書籍をご紹介します。
どれも定番です。
この記事のような解説を書く際にも参照することがあります。
まず英文法の基礎はこちら。
昔はフォレストという名前でしたが、いつの間にか名前が変わっていましたね。
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以上です。
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