作品概要
「ゲーム理論」を発見した実在の天才数学者ジョン・ナッシュの苦悩を描いた物語。米ソ冷戦下、暗号解読の極秘任務…、その重圧に主人公の精神は追い詰められていく…。
実話をもとにしたサスペンスが描かれます。
彼を支える妻、そして周囲の人々との暖かいふれあいと自身の諦観ともとれるようなひたむきな努力・節制を重ねながら彼は絶望から立ち直っていきます。
その在り様を淡々と描写していく後半は静かに心打たれます。
94年ノーベル経済学賞を受賞した実在の人物、ジョン・ナッシュの半生を描いたドラマ。47年、ジョンは「非協力ゲーム理論」を発表。その才能に国防省が目を付け、彼の周囲にはあやしげな人物が出没し始める。
出典:Amazon
基本情報
アメリカ映画 2001年公開 (135分)
原題:A Beautiful Mind
舞台:1947年 – 1994年 ニュージャージー州プリンストン / マサチューセッツ州ケンブリッジ
出演:
ラッセル・クロウ (ジョン・ナッシュ)
エド・ハリス (ウィリアム・パーチャー)
ジェニファー・コネリー (アリシア・ナッシュ)
ほか
語彙の傾向
- Main:夫婦関係、学術研究、精神障害 関連
- Sub:家族、子育て、大学、数学、経済学、暗号、軍事、政治 関連
英語表現 セリフ解説
ノーベル賞ノミネート
収録時間: 2:01:38 ~ 2:04:01
ノーベル賞に相応しいか調査に訪れたキングとジョンとの会話シーンです。
セリフ
King :
Shall we have tea?
キングがジョンお茶に誘うセリフです。
Shall we … ?: (一緒に) … しませんか?
相手に何かを提案するときに使う表現ですが、今のアメリカの日常会話で「Shall we …?」はあまり使われない表現(※)です。このような場面では「Why don’t we … ?」等の表現が使われます。
※「Shall we go?」(そろそろ行きましょうか?)といった決まり文句での使用はあります。
私自身も仕事上 アメリカ英語が主のため、 shall にふれる機会は少なく、あるとしても義務の用法がほとんどです。フォーマルな規則、契約等に関するものです。
では、ここでキングが「Shall we …?」と言っているのはなぜか? すみません。私もはっきりとはわかりません(笑)。イギリス英語との違いなのか、ユーモアなのか、時代的なものか。ただ、このような点も頭に入れて映画を見ると、また違った面白さがあるのではないでしょうか。
セリフ
John :
M-Most… Most commercially available brands of tea are not suitable to my palate.
【和訳】
ジョン:
『市販のものは口に合わないんだ。』
commercially available:市販の、商用の
palate:味覚、口蓋、嗜好
palate には口蓋という意味があり、これは口の中の天井の部分です。
また味覚や嗜好という意味もあります。この場面ではこの意味で使われています。日本語でも「口に合う」と言ったりしますよね。形容詞にすれば「palatable」です。同様の単語に「taste」があります。
セリフ
John :
I’m not… There are some northern Indian teas which are dense enough… I enjoy the flavor that they have…
【和訳】
ジョン:
『味の濃い北インドのお茶があるんだ。僕はその味が好きなんだ』
northern:北の、北部の
dense:濃い、深い
flavor:風味、味わい
こちらも「taste」と似た言葉ですが、taste は口で感じる味、flavor は口と鼻で感じる香りを含めた風味です。
セリフ
John :
I have a son that age. Harvard.
【和訳】
ジョン:
『ハーバード大学に行ってるんだ。』
Harvard:ハーバード大学
言わずと知れた名門大学です。この映画の舞台の一つプリンストン大学と同じく、アイビー・リーグに含まれる大学です。
アイビー・リーグ(Ivy League)は8つの私立大学の総称で、すべてアメリカの北東部にあります。東海岸の裕福なエリート達として、伝統的にアメリカでは捉えられています。
ジョンがボソリと「Harvard」と付け加えたのは、もちろん「息子がハーバード大学に行ってるんだ」ということでしょうから、息子さんも優秀ですね。
セリフ
John :
I would have thought the nominations for the Nobel prize would have been secret. I would have thought you’d only find out if you won or lost.
【和訳】
ジョン:
『ノーベル賞のノミネートは秘密裏に行われると思っていたよ』
ノーベル賞ノミネートに関して来訪したと言うキングに対する、ジョンの言葉です。
would have thought …:(当然) … だと思っていた
当然そうだと思っていたけれどそうではなかったんだ、という時に使用される表現です。用法としては仮定法過去完了です。
ノーベル賞のノミネートは秘密だと思っていた、受賞したときにはじめてわかる(you’d only find out if you won or lost.)と思っていた、でもキングは受賞前に本人に会いに来ちゃって目の前にいるよね、というわけです。
nomination:指名、候補
実際 ジョンが言っているように、ノーベル賞の選考過程は秘密で、受賞から50年後に公表されます。よく誰々がノーベル賞のノミネートされたとか報道されますが、「ノーベル賞の候補」が公的に発表されているわけではありません。
ジョン・ナッシュのノーベル経済学賞の受賞は1994年ですので、その選考過程の公表はまだまだ先ですね。
セリフ
King :
That is generally the case, yes. But these are special circumstances.
That is the case :そのとおり、事実はそうだ
前にでた話に関して、そのとおりだ、と返す表現です。事実(case) = ノミネートは秘密だ、ということですね。
但し、概ね(generally)と付け加えて、次の文の例外的な特例(≒ special circumstances)があることをキングはほのめかせています。
セリフ
King :
The awards are substantial. They require private funding. As such, the image of the Nobel is…
【和訳】
キング:
『賞金は高額では、それは民間の資金で賄われているのです。そのため、ノーベル賞のイメージというもが…。』
⇒
award:賞金、賞
substantial:かなりの、相当な
They require private funding:
無生物主語の文です。They は「彼ら」という意味ではなく、その前の文にある高額の賞金(awards)を指しています。
As such:したがって、そのため
セリフ
John :
I see. You came here to find out if I was crazy? Find out if I would screw everything up if I actually won?
【和訳】
ジョン:
『なるほど。君は僕が頭がおかしいか確かめに来たわけだ。実際、受賞したら全て台無しにしないか見に来たのだね?』
screw up:台無しにする、めちゃくちゃにする
セリフ
John :
Dance around the podium, strip naked and squawk like a chicken, things of this nature?
【和訳】
ジョン:
『壇上で踊りだしたり、素っ裸でニワトリみたいに喚いたり、そんな類のことだね?』
podium:演壇、表彰台
squawk:わめき声、叫び声
of this nature:この手の、この種の
セリフ
John :
Would I embarrass you?
【和訳】
ジョン:
『君たちの顔に泥を塗るかって?』
embarrass:恥をかかせる、困らせる
セリフ
John :
I take the newer medications, but I still see things that are not here. I just choose not to acknowledge them. Like a diet of the mind, I choose not to indulge certain appetites.
【和訳】
ジョン:
『僕は新しい薬を飲んではいるが、まだ ここにはないものが見えるんだ。無視してるがね。心にダイエットするように、ある種の欲求を抑えるんだ』
ジョンが自身の現在の状態を語る場面です。自分の病気と真摯に向き合う姿勢が見て取れます。
medication:薬物、薬剤
I still see things that are not here:
see things that are not here で「ここにないものが見える」となりますが、see things だけでも進行形で使用すると、「幻が見える」という意味になることがあります。
There is no one there. You must be seeing things. :
そこには誰もいないよ。君は幻を見ているんだ。
acknowledge:認識する
類似した表現に「admit」、「recognize」があります。
acknowledge :事実をそのまま認める
admit:不本意ながら認める
He admitted his failure. 彼は失敗を(しぶしぶ)認めた。
recognize:過去の経験から認識できる、公式に認める
I didn’t recognize you. You look different. 君だってわからなかったよ。別人みたいだ。
indulge:欲望を満足させる、にふける
appetite:欲求、食欲
ラッセル・クロウの声は渋くてシビれますね!
この後に、学者の功績を称えて万年筆(ペン)を置くシーンが始まります。Wikipedia(英語)※を見てみると、このしきたりはフィクションのようですが、映画の全体の中で世界観が作りこまれており素晴らしいです。
※The so-called pen ceremony tradition at Princeton shown in the film is completely fictitious.
Wikipedia(英語) A Beautiful Mind (film)より
以上です。
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